「熊っぷ」上に増えてゆく熊―熊から身を護るために
目次
福島県では熊の目撃情報が年々増えてきています。福島県警は熊による被害を防ぐため、熊の目撃情報をまとめたマップ「熊っぷ」を作成しました。
特に山の麓などの地域は熊の目撃情報が多くなっています。そのあたりに赴く予定のある方は、一度熊っぷをチェックしておきましょう。そして、どうしても熊の目撃情報が見られる場所に行かなければいけない方、またはその近隣に住んでいる方は、熊対策を事前にとっておくことが必要です。
この記事では、熊の被害や熊対策についてまとめています。被害に遭わないためにも、ぜひ目に通してください。
「熊っぷ」に熊が増えていくワケ
福島県の熊の目撃情報は2019年においては31件でした。これは前年比+17件の数であり、かなり増えてしまっていると見てもよいでしょう。場所としては土湯や松川、弁天山付近が多くなっており、いずれも山が近い地域となっています。
このように熊が増えた原因は、山の食料が減ったことと、人里で得られる餌の味を覚えたからであると推測されています。
熊はもともと、山で生きる生き物です。山の中の餌を糧に生きることができます。しかし近年山が荒廃し土地が狭くなるにつれて、餌が不十分になってしまいました。
そしてそのようにして山の中の食べ物がなくなり人里に下りて餌を探さざるを得なくなった熊は、人里の食べ物の味を覚えます。このように言うと人里の食べ物=人間の味と捉えてしまわれると思いますが、福島県においては畑などにある農作物を指します(三毛別羆事件のように人間の味を覚えてしまうという悲劇もありえなくはありません)。畑で栽培されている食物で熊の好物としてあげられるのは、リンゴや桃、トウモロコシなどです。福島県ではミツバチの巣箱が襲われたという被害もでています。
熊対策をしっかりととろう
熊にむやみに手を出してはいけませんが、ただ被害を受け続けては損害が生まれてしまいます。特に熊っぷにてマークされている周辺の地域では、熊対策は必須といえるでしょう。
ここでは、農作物を熊から護るための対策と、自分の身を熊から護るための対策を解説していきます。
熊から農作物を護るためには
まず、収穫しきれなかったり不要となったりした果樹を撤去しましょう。旬を過ぎてしまって放棄した作物や、畑の近くに廃棄した作物は熊の餌となってしまいます。また、ハチの巣も熊の好物です。見つけたら早めに除去するようにしましょう。田畑に周囲に電気柵やスピーカーなどの音の鳴るものを設置することで、より安全性が高まります。
もうひとつ、熊の餌になりやすいのが、家庭ごみです。ごみは漁られやすいため、ごみ収集の指定日の朝にごみを出すようにしましょう。できる限り、夜間にごみを外に置かないようにします。
そして、熊は本来臆病な生き物であるため、隠れる場所があるとそこに潜む可能性があります。やぶなどの見通しの悪くなるものは下刈りをし、熊の隠れ家となる場所を作らないようにしましょう。
熊から身を護るためには
熊の目撃情報がある場所にどうしても行かなければいけなかったり、そもそもそこに住んでいたりという場合があります。その際には、万が一熊に出会ってしまったときの対策をとっておきましょう。赴く際には、できれば熊が活動している時間である夕方~朝の間を避けるとよいです。また、犬は連れていかない方がよいでしょう。犬が吠えてしまい、熊を刺激してしまうという可能性があります。
まずはその地に赴く前に、クマ鈴や熊撃退スプレーなどの熊対策グッズを準備しておくとよいでしょう。それらのグッズは自治体によっては貸出していることがあるので、チェックしておくとよいです。クマ鈴は、自分の存在を熊に知らせるために使用します。熊は本来、非常に憶病な生き物なので、人の気配に気づくと逃げ出します。そのため、クマ鈴は音で脅かすために使うのではなく、音が鳴るように身に着けるといった使い方をします。クマ鈴を使う際には、大きな音を鳴らしすぎて周囲の音に気付けないといった状況は作らないようにしてください。また、熊撃退スプレーは無暗に使うのではなく、危険が迫ったときのみに使うようにします。
できる限り、熊に出会わないように注意を払いましょう。たとえば、春になると冬を越せなかったシカなどの死体が山にある場合があります。この死体は熊にとっての餌です。熊がシカのような一度で食べられないような餌を手にした場合、食べきるまで近くに潜んでいる可能性があります。その餌に近づいてしまうと餌を護るために熊が飛び出してくることがあるので、動物の死体を見つけたら極力近寄らないようにしましょう。また、山菜や植物の実も熊の好物です。それらを採取する場合は、熊と鉢合わせしないように周囲に警戒するようにしましょう。
そしてもしも熊に出会ってしまったら、慌てないようにしましょう。大声をあげたり、勢いよく走って逃げたりしてはいけません。熊を驚かしてしまってストレスを与えると、防衛本能として襲い掛かってくることがあります。そして逃げる際には、静かに、そして背中を見せないようにして逃げます。とにかく、冷静に対応することが大切です。また、子熊には絶対に近づいてはいけません。子熊の近くには親熊が潜んでいることがほとんどです。子供の危機を感じた親熊が突進してくることがあるので、絶対にやめましょう。
距離があるところで熊と出会ったら、なるべく冷静に対応しましょう。熊がこちらに気づいていないときは静かにその場から離脱します。熊がこちらに気づきながらも無視していたり動かないでいたりするときも同様です。ゆっくりと近づいてきているときは、熊がこちらを人間だと気付いていない場合があるので、ゆっくりと腕を大きく振りながら優しく声をかけます。あまりないパターンですが、こちらが人間だと気付いていながらも近づいてくる場合、捕食を目的としている可能性があります。屋内に逃げることができるのであればそこへ逃げ、難しい場合は攻撃に備え、強気な対応をとりましょう。大きな棒など武器になるものを持ったり、熊撃退スプレーの噴射準備をします。
突然現れたなど、近い距離で熊と遭遇してしまった場合も、冷静な行動をとるのは同様です。両腕を上げてゆっくりと振り、話しかけながら静かに移動します。できれば熊の突進に備えて、熊と自分の間に木などの障害物が来るように位置を調整しましょう。特別熊が行動をおこさない場合は、睨みつけない程度に熊から目を逸らさない状態で、ゆっくりと立ち去ります。熊がこちらに気づいている場合、動かないでいると敵対行動とみなされる場合があるので、冷静に行動していきましょう。
熊が突進してきた場合も、できる限り平静を保ちます。熊の突進はほとんどがブラフチャージと呼ばれる威嚇行動で、突撃してきても途中でストップします。その後後退していくので、穏やかに声をかけながらこちらも熊と距離をとるようにしましょう。このとき、熊撃退スプレーを持っていれば、噴射準備を行います。
もしも退避が間に合わず襲われた場合は、腹部と顔を守るようにしてうつぶせになります。そして、手を使ってうなじを護ってください。転がされた場合も、元の体勢に戻るようにします。
熊の生態
日本に生息する熊は、ヒグマとツキノワグマです。北海道にヒグマ、本州と四国にツキノワグマが生息しています。そのため、福島県で目撃される熊は、ツキノワグマです。ツキノワグマは落葉広葉樹林のある場所に生息しているため、山地の地域での目撃情報が多くなっています。
熊は雑食ですが、食物としているものの9割が植物です。どんぐり類が実る季節はどんぐりを食べ、その他の季節には葉やイチゴ、昆虫などを食べています。ハチミツも大好物です。そのため、人里に下りてきたときもまずは畑などを荒らしてしまいます。
熊は聴覚と嗅覚に優れ、運動能力も高い生き物です。自足40㎞以上で走るので人間よりも早く、水泳も木登りも得意です。木登りや穴掘りのための鋭いツメをもっています。歯は雑食のため肉を食べるための犬歯と葉をすりつぶすための臼歯の両方を持っています。また、熊は冬になると冬眠します。秋に大量に食べて脂肪を蓄え、エサが少なくなる冬には眠るのです。冬眠空けは再び食料を求め始めるので、冬が過ぎたころには特に熊に注意しましょう。
福島県における熊の被害
福島県においては農作物の被害が多くなっていますが、中には人的被害も見られます。特に人的被害があった場所では、熊が人を襲うことを覚えてしまっている可能性もあるため注意しましょう。
2019/5/3喜多方市 北塩原村
命に別状はありませんでしたが、顔や脚を噛まれ重傷を負いました。場所は檜原湖沿いの遊歩道とのこと。熊の大きさなどは不明だそうです。
2019/6/13喜多方市 山都町
R磐越西線山都―喜多方間を走行していた普通列車が、熊と激突しました。乗客にけが人はいませんでした。熊の大きさは1.1m。熊は死亡しました。
2019/5/21福島市 弁天山公園
畑を見回りに来た男性が、ミツバチの巣箱が荒らされているのを発見。前日の20日にもどうようの被害を受けていた。
熊を目撃した場合は
もしも熊を目撃したら、警察署に連絡をしましょう。地域で情報を共有し合うことが大切です。
まとめ
熊は本来は憶病な生き物ですが、時には襲い掛かってくることもあります。熊が潜む可能性がある場所に赴く際には、きちんと熊対策をとっていきましょう。また、熊についての知識を身に着けておくことで、いざという時に助かる可能性が高くなります。
福島県では熊の目撃情報をまとめた「熊っぷ」が公開されています。インターネットなどで閲覧することができるので、たまに確認しておくのがおすすめです。できる限り熊の出没する場所に近づかないようにするのが大切です。