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2019.12.27

魚の旨みが凝縮されたいわき市の縄文干しって干物知ってる?

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はじめに

日本人は飽食文化の中で生活をしているため、普通に生活している分にはほぼ食べる物に困ることはありません。また若年層ではアジアやヨーロッパなどの外国食を食べる機会が多く、昔ながらの和食から遠ざかっている傾向にあります。しかし海外では和食ブームの影響で、日本人が普段あまり食べないような食材でも注目を集めている場合があります。その中の一つと言えるのが、和食としてよく登場する干物です。

特に海で獲れたばかりの新鮮な魚をすぐさま干物として仕上げられた干物は、旨みがぎゅっと凝縮されて噛みしめるほど美味しいものです。そしてそんな美味しい干物がいわき市にもあります。この記事ではいわき市で昔から作られている縄文干しについてその魅力を紹介します。

いわき市の縄文干しの概要

普段から干物を食べるという方でも、縄文干しという干物についてはあまり知らないかもしれません。この章ではまずいわき市の縄文干しとはどういった干物であるかについて解説していきます。

縄文干しの名前の由来

水産品のブランド品の一つに「常盤もの」がありますが、この常盤ものとはいわき市で獲れた水産品のことを指します。常盤ものとして全国に出荷される水産品は良質な物だけに限られますが、そんな商品としての水準から漏れてしまった雑魚や小魚は主にいわき市の地元民の方が食べていました。海の恵みである魚を無駄にしてはもったいないという思いから、地元民の方が余った魚を建物の屋内の風通しの良いところに吊るし、保存食として加工しました。

縄文時代の知恵から誕生したことから、いわき市で作られる干物は「縄文干し」と呼ばれるようになりました。

縄文干しの主な作り方

ここで縄文干しの作り方について、以下で簡単に確認しておきましょう。

①魚が新鮮なうちに、魚種に即した形で下処理を済ませる

②独自の低温調味液に漬け、-1〜-3℃の氷温庫で一晩置く

③魚に灰汁などが残らないよう、セラミック水で綺麗に洗う

④大型扇風機で風を当てながら、日陰で長時間干し上げる

⑤干し上げた後、さらに一日冷凍庫に置く

日陰で風に当てながら干し上げる際には、その日の天候や温度、風向きなどまで計算に入れた上で微妙に条件を変えながら仕上げていかなければなりません。こうして時間をかけて干し上げると魚独特の生臭さがなくなり、解凍した時にドリップが出にくい干物に仕上がるそうです。また縄文干しでは-27℃で氷温熟成させる工程があり、そのおかげで魚の身に旨みがぎゅっと凝縮されるようになります。

縄文干しの受賞実績

そうやって手間暇かけて作られる縄文干しは、その美味しさで以下のような賞を受賞しています。

・「第12回 いわき市観光みやげ品推奨審査会」で優秀賞受賞

・「全国水産加工たべもの展」で水産庁長官賞受賞

いわき市で作られる縄文干しは職人の方の高度な技術によって、その変わらぬ味が守られています。美味しくなければまず受賞実績が作れるはずはないので、これだけでも縄文干しの美味しさが証明されていると言えます。

干物はいつ頃から食べられ始めたか

前章では縄文干しとはどういった干物であるかについて紹介しましたが、皆さんは日本人がいつ頃から干物を食べ始めたかご存知でしょうか。この章では次に干物がいつ頃から食べられ始めたのか、その歴史を紐解いてみましょう。

干物は縄文時代から食されていた

縄文干しは縄文時代の知恵から誕生したことを前述しましたが、実は干物そのものについても縄文時代から食べる習慣が始まったとされています。実際に発掘された縄文土器の中から貝の干物が発見されたこともあり、また愛知県豊川市にある貝塚には大量の貝殻が残されていました。このことからも干物文化は約4,000年前から日本に根付いたことが分かります。

昔は冷蔵庫や冷凍庫のような文明の利器がなかったために、食料の保存方法として多用されていたのが「食料の乾燥」でした。縄文時代には自力で食料を採取していたため、自然災害などにより食料の供給がなくなってきまうこともあったはずです。

そのため魚や貝といった魚介類が多く獲れた際には干物として保存しておき、食料がなくなってしまいそうな時に回すことをしていたのでしょう。食材にあらかじめ塩分をきかせて水分を飛ばせば常温保存でも傷む心配がなくなり、比較的長期間食料を保存することができるようになりました。つまり干物は縄文時代の知恵の結晶という訳です。

干物の時代ごとの役割とは

干物文化の始まりは縄文時代にはあった訳ですが、それから時代が進むにつれ干物が果たす役割もまた変化していきました。

例えば奈良時代では大宝律令が課せられたことで、各地に税を納めるよう義務が課せられました。その際に出来たのが「調」という税であり、これは各地の特産品を税として納めることになっていました。近隣であるならまだしも、全ての地域が都との距離が近い訳ではありません。そのため当時の調として献上した干物は、現在のものよりも塩分濃度が高くさらに干し上げたものだったことが推測されます。水産物が特産品の地域では干物にすることでしか調として献上する術がなかったとも言えるでしょう。

また奈良時代の文献である「正倉院文書」には、干物に関する記述がいくつか残されています。

・あへつくり:魚の内臓を抜いて干したもの

・きたひ:イワシなどの小魚を丸ごと干したもの

・すわやり:サケやマスなどの魚の身だけを細かく切り干したもの

現在の干物とは少し違う作り方のものもありますが、奈良時代の人々もより美味しく保存食として干物を食べるために工夫を凝らしていたことがうかがえます。

平安時代には宴の席にも出ていた

現在の干物に対するイメージと言えば地味、日常生活で食べるものといった具合です。しかし奈良時代からさらに時代が進み平安時代にもなると、平安貴族らが集まる宴席の場に干物が酒肴として登場していたとあります。これは紫式部が書いたとされる「源氏物語」にも登場しており、当時は干物のことを「からもの」と呼んでいたことも読み取れます。

干物の生産量が昔より増えていたようですが、平安京の地理的な要因のこともあり干物は貴族にとっても希少品であったとされています。

江戸時代には藩が干物作りを推奨していた

江戸時代においても幕府への献上品として重宝された干物ですが、その頃になると干物作りが各地で盛んに行われるようになります。また各藩が干物作りを推奨していたとされ、干物が藩における産業の活性化に一役買っていたようです。

海のない藩からすれば水産品を長期保存できる干物は大変貴重な存在だったことでしょう。江戸時代にもなると交通網がある程度整っていたため、全国各地に干物が出荷されることにもなりました。奈良時代のようにその土地の特産品を税として納める制度こそなくなりましたが、特産品の生産に力を入れることでその地域の商売が繁盛して人々の暮らしが潤うことにもなったはずです。

こうして時代の変遷とともに役割や価値は変わっていったものの、干物文化は長い時間をかけて日本に着実に根付いていきました。

干物の作り方の種類の一例とは

この記事ではいわき市で主に作られている縄文干しについて紹介していますが、干物の作り方にも実際にさまざまな種類があることはそれほど知られていません。この章では最後に、干物の作り方の種類について簡単に紹介しておきましょう。

素干し

最も昔ながらの製法に近いのが「素干し」と言われる作り方で、長い日数をかけて干すことで食材の水分を最大限抜いてしまうことが特徴的です。これは細菌類の繁殖を抑制するためでもあるのですが、風味も水分とともに飛んでしまい食感が固くなってしまうデメリットも同時に存在します。

煮干し

食材を煮てから干す作り方を「煮干し」と言いますが、これも素干しと同じく水分をかなり飛ばしてしまうため食感は悪くなりがちです。ただ食材の旨みが凝縮されているため、出汁をとるのに最適です。

開き干し

魚の内臓を抜いてから開いて干す作り方のことを「開き干し」と言います。スーパーなどでよく見かけるアジやホッケの干物は、この開き干しによって作られています。

一夜干し

現在では特に生産量の多いのが「一夜干し」によって作られる干物です。軽く水分を飛ばす程度しかしないために保存はきかず、冷凍庫および冷蔵庫での保存が必須となります。ただし乾燥に時間をあまり割かないため身はふっくらと柔らかくなり、硬い干物が苦手という方でも比較的食べやすい干物と言えます。

この他にもみりん干しや寒風干しなどの作り方がありますが、縄文干しについては「凍干し」の作り方に近い部分があるかもしれません。

またここでは日本国内の干物の作り方について紹介しましたが、実は海外にも干物という食文化があるようです。

例えば中国では「ハームユー」や「シエンユー」といった干物があり、塩の中で直接漬けてから天日干しにするため、日本の干物に比べてかなり塩分が強いです。あるいはポルトガルでは「バカリャウ」と呼ばれる干物があり、これはグラタン風の料理やオムレツ風の料理の食材として再調理されて食べられることが多いようです。

干物自体は和食だけに限ったものではなく、調べてみると実は世界中に名前や作り方の違う干物があることが分かります。ただ干物の作り方によっても味わいや塩分のきつさが全然違ってくるため、自分好みの干物を探してみるのも楽しいかもしれません。

まとめ

いわき市でよく食べられている縄文干しは、「丸源商店」の公式オンラインショップから購入することができます。解凍してから弱火でじっくりと火を通すことで縄文干し本来の美味しさが味わえます。身が固く味の薄い干物を食べ飽きた方は、高級干物とも位置付けられる縄文干しを一度食べてみてはいかがでしょうか。

▼関連サイト▼

丸源水産公式サイト

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