2019年は福島県で開催! 世界少年野球大会のすばらしさを解説 参加資格は? どんなことをするの?
目次
毎年7月下旬から8月中旬にかけて開催される世界少年野球大会。この世界少年野球大会は日本中どころか世界各地で開催されるイベントですが、2019年はなんと福島県が開催地となります。実はこの世界少年野球大会は普通の野球大会と違って勝敗を決め、順位をつけることを目的とした大会ではないんです。野球の技術向上だけでなく、子ども達の心身の成長を促すプログラムが多く取り込まれています。ここでは世界兆年野球福島大会の概要や理念、どんな団体が主催しているのかなどを紹介します。
世界少年野球大会福島大会の概要
日時:7月30日(火)~8月7日(水)
8泊9日の日程で開催
会場:主会場/福島市あづま総合運動公園
その他福島県内各所
主催団体:一般財団法人世界少年野球推進財団
(World Children’s Baseball Foundation/W.C.B.F)
参加者の条件:野球教室/10~11歳の少年少女 野球経験の有無は問わない
国際交流試合/大会開催地の少年野球チーム
(2019年世界少年野球大会福島大会への参加募集はいずれも締め切られています)
概要をまとめてみましたが、驚くべきは参加者の条件です。なんと野球教室の参加者は『野球経験の有無は問わない』とあります。一般的な小学校高学年向け野球教室はすでに野球チームに所属している子どもの技術向上のために行われるものですよね。この一見不思議な参加条件こそが、世界少年野球大会の目的を具現化したものなんです。次の項目では世界少年野球大会の目的を見てみましょう。
世界少年野球大会の目的
世界少年野球大会の理念は「正しい野球を全世界に普及・発展させると同時に、世界の少年・少女たちに友情と親善の輪を広げよう」となっています。世界少年野球大会が言う【正しい野球】とは単に野球の技術が上達することや試合に勝つことではありません。野球というスポーツを通じて世界平和や相手との友情、親善を育むことができるのが正しい野球なんです。勝っても負けても、強くても弱くても、野球が上手でも下手でも、国籍が違っても、野球というスポーツに興味がある人同士仲良くなろうということですね。
世界少年野球大会では国際親善試合のほかに野球教室を並行して開催します。前述した通り、この野球教室は野球経験が無い子どもでも参加できます。10歳、11歳というと小学校高学年。小学校高学年を対象にした野球教室の大半は野球経験必須、場合によっては大会で結果を残したことがある子どもだけが参加できるものすらあります。野球経験が無い10歳、11歳でも参加できる野球教室というのはほとんど無いと言っても過言ではありません。
ではなぜ野球経験が無くても野球教室に参加できるのか。世界少年野球大会の野球教室は、技術の向上、ひいては将来のプロ野球選手を育成するという目的で開催されるものではないからです。現に毎年野球を全くしたことが無い子どもが何人かこの野球教室に参加しています。彼、彼女たちは野球をしたことがなくても野球教室のプログラムから国際交流や世界平和、地域の伝統などをしっかりと学び、野球というスポーツをさらに好きになって帰っていきます。世界少年野球大会の狙いはまさにこの交流と親善にあります。野球が上達しなくても、野球を楽しみ、友達と仲良く過ごすことができれば目的は達成したといえるでしょう。
世界少年野球大会は2019年の福島大会で29回目の開催となります。昨年は島年県松江市で開催されましたが、それまでに参加した国・地域は97にも上ります。本当に多くの国の子どもたちが日本に訪れているんです。今回の福島大会では予定している参加国はアメリカ、中国、アルゼンチン、ペルー、オランダ、スイス、フランス、タイ、ネパール、オーストラリア、ガーナ、ラオスの12か国の子どもたち。ラオスは初参加となります。
ちなみに、世界少年野球大会の参加費は一部交通費を除いてすべて無料です。自分の道具を持っていなければ、わざわざ購入する必要もありません。親の経済状況で教育に格差が生まれるという分析結果も発表されている昨今ですが、親の経済状況は子どもにはどうしようもないこと。金銭面で参加の可否を左右されないというのはとても素晴らしいことではないでしょうか。
世界少年野球大会を主催する世界少年野球推進財団とはどんな団体?
世界少年野球大会を主催しているのは世界少年野球財団という団体です。実はこの団体の創設者のひとりは往年の名プレーヤかつ名将であり、現在も野球界の重鎮として活躍している王貞治氏。王貞治氏とアメリカのホームラン王であるハンク・アーロン氏とが『野球を正しく全世界に普及、発展させると同時に、世界の青少年に友情と親善の輪を広げよう』という趣旨に基づいて設立しました。
公式サイトで王貞治氏は以下のように語っています。
あるとき、私の友人であるアメリカ野球界のスーパースター、ハンク・アーロンさんと野球の話になり、我々が体験した野球の素晴らしさを次代を担う子どもたちにも伝えていこうと、「WCBF・世界少年野球大会」を始めました。
最初は、世界中の子どもたちを集めて野球クリニックをやろうというくらいの軽い気持ちで始めたのですが、いざ、始めてみるとこれがたいへんな大事業になってしまいました。今後、いっそう内容の充実した大会にし、世界中の子どもたちから喜ばれる素晴らしいものにしたいと考えています。
王貞治氏もハンク・アローン氏も世界に類を見ない名選手。プロ野球選手として、厳しく勝敗を争う世界で生きてきた人たちです。それでも「野球は素晴らしい」と言い切ることができるほどに野球は魅力的で、世界中の人との交流のきっかけになり得るスポーツということ。試合の勝敗以上に大切なことを野球から学ぶことができそうです。
世界少年野球大会福島大会への王貞治さんの意気込み
2020年にはオリンピック東京大会が開催されます。東京オリンピックで行われる競技のうち、ソフトボールと野球の一部試合が福島県で実施される予定になっています。ソフトボールと野球の試合実施決定は、3.11以降苦労を重ねてきた福島県民や福島県ファンにとって明るく嬉しいニュースでしたよね。
そしてさらに東京オリンピックに先立って世界少年野球大会が2019年に福島県で開催されることになりました。世界少年野球大会がオリンピック前に福島県で開催されることになったのは偶然ではなく理由があります。
福島県には世界の子どもたちを受け入れることができるすばらしい宿舎や設備が揃っていたということももちろん理由の一つ。ですが、王貞治氏が新聞社へのインタビューでもう一つの理由を語っていました。その理由とは、福島県が今も悩まされる風評被害です。
王貞治氏は「子どもたちが野球や日本の生活、文化を体験して元気に帰り『福島は本当に良かった』と家庭で話すことが、福島のためになり、風評払拭(ふっしょく)の役に立つ。福島の皆さんは、復興に前向きに取り組んでいる。現実の姿を見てもらえればいい」(福島民友新聞2019年5月29日掲載 http://www.minyu-net.com/sports/sports/FM20190529-381776.php)とインタビューに答えています。
福島で暮らす人たち、あるいは福島で生まれ育った人たちが大なり小なり戦っている風評被害。世界少年野球大会では日本のみならず、世界中の国々から子どもたちが福島を訪れます。百聞は一見に如かずという言葉の通り、子どもの素直な目で現実の福島を見てもらうことがオリンピックを前に風評を打ち消す一助になることは間違いないでしょう。
世界少年野球大会福島大会ではどんなことをするの?
世界少年野球大会福島大会のスローガンは【フィールド・オブ・ドリームズ—つながろう!福島と世界の子どもたち】。世界少年野球大会では例年野球技術だけでなく、その国や地域の伝統・文化が伝わるような体験をプログラムに取り入れています。世界少年野球大会福島大会でも桃の収穫や土湯こけしの絵付けを体験する予定になっています。また、国際交流試合では福島県内の少年野球チームと招待国である台湾の少年野球チームが9日間の日程の中で何試合か親善試合を行います。言葉が通じなくてもひたむきにプレイをする姿に違いはありません。日程があう人は試合の観戦に足を運んでみるのもいいですね。
世界少年野球大会は8泊9日の日程で開催されます。期間中は参加者全員が共同生活を送ります。たとえ家が近くても同様です。子どもたちは海外から約60名、日本各地から約30名、開催地である福島から約30名の計120名参加予定になっています。子どもたちは5人一組のグループを組んで生活をともにします。グループには大人の引率スタッフが1名つくことになっています。海外の子どもたちにも母国の引率スタッフや通訳スタッフが付きます。このようにフォロー体制も万全。子どもたちも存分に相手と交流を深めることができるはず。
世界少年野球大会でまた一歩福島の復興が近づく
世界少年野球大会は勝ち負けやプレイ技術向上をさほど重要視していません。日本や福島の文化を知り、参加する子どもたち同士で交流をし、友好を深めるために開催されるイベントです。この世界少年野球大会が2020東京オリンピックを目前に控えた福島で開催されるというのは間違いなく大きな意味を持っています。実際に多くの子どもたちが福島に足を運び、福島の本当の姿を知ってくれます。すると子どもたちは必ず「福島は良いところだった! 何の心配も無い!」と周囲の大人に伝えてくれるはず。世界少年野球大会福島大会は、福島の皆さんの努力が世界に伝わる契機となり得るイベントです。野球場に響く子どもたちの歓声が福島の風評被害をきっと吹き飛ばしてくれます。この夏は日本中、世界中の野球少年と野球少女を福島全体で応援したいですね。