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2020.01.10

地元民もあまり知らない福島の地鶏の種類とその魅力とは

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はじめに

私たちは日頃から牛肉や豚肉、それに鶏肉といったお肉を食べる機会が多いです。そして牛肉は牛肉で国産牛や和牛、のブランドがありますし、豚肉は豚肉で同じようにブランドがそれぞれ存在します。それは鶏肉においても同様であり、全国各地に「地鶏」と呼ばれる国産の鶏肉が点在しています。ただそうは言っても全国にあるという地鶏の種類を網羅している方はほぼいないでしょうし、福島県に限定しても県内でどのような地鶏が育てられているのかを知る機会もあまりないはずです。

この記事では福島県内で育てられている地鶏の種類とその魅力について紹介します。

地鶏の定義の概要

これから福島県内で育てられている地鶏について紹介していく訳ですが、皆さんはそもそも地鶏とはどのような定義に基づくものであるのかご存知でしょうか。この章では福島の地鶏について紹介していく前に、まずは地鶏の定義から確認しておきます。

日本で地鶏という言葉について定義しているのはJAS(日本農林規格)であり、それによると「在来種由来の血液百分率が50%以上である国産銘柄鶏の総称」とされています。つまり在来種から血の繋がった銘柄であるか、素ひなの生産の片親もしくは両親に在来種を使っているかが問われてきます。

そして飼育期間については75日以上を要し、28日齢以降は平飼いで1平方メートルあたり10羽以下で飼育しなければならないという決まりもあります。ここで言う平飼いとは鶏舎内、または屋上などで鶏が自由に運動できるようにして飼育することを指します。

これらの決まりごとはJAS法によって規定されていますが、決して地鶏の生産業者がその決まりを守らなければならないという強制力はありません。しかしJAS法に則っていない鶏を地鶏として売ることは、景品表示法に抵触する恐れがあります。

地鶏については在来種の血が50%以上混じっていればそれで良いのであり、その基準を満たす範囲内であればどのような品種を掛け合わせても特に問題ありません。

地鶏以外の鶏の種類とは

前章で地鶏について簡単に紹介しましたが、日本国内に出回っている鶏肉の全てが地鶏の肉でないことは周知の事実です。それでは実際に私たちが食卓で口にする鶏肉には、どのようなものがあるのでしょうか。この章では次に、地鶏以外の鶏肉の区分について紹介していきます。

ブロイラー

鶏を育てる場合には鶏肉を目当てとするか鶏卵を目当てとするかによっても、適する品種が異なります。鶏卵を取るためではなく鶏肉を取るために最適な品種と呼ばれるのが、ブロイラーと呼ばれる鶏です。食肉用品種として定着しているだけあり、その肉質は柔らかいです。

最も一般的な鶏の品種であり、私たちの生活にもかなり身近な存在です。品種改良や飼育環境の向上により、最近では飼育期間約50日で体重3キロ程度にまで発育します。飼育期間が短い若鶏が主に出荷されるため、焼き物や煮物、蒸し鶏など料理の方法を問わずさまざまな料理に適しています。ブロイラーのもも肉は脂が乗ってジューシーな一方で胸肉はパサパサしているというイメージが根強いですが、最近では肉質が向上しており胸肉であっても案外美味しいものです。

銘柄鶏

ブロイラーと同じひなであっても、エサを変えたり飼育期間を延長したりとさまざまな工夫を凝らして差別化を図った鶏のことを銘柄鶏と呼びます。

基本的には明確な基準や規定がないため、全国的に見るとおよそ100種類以上の銘柄鶏が存在するとされています。ただし鶏の品種自体は同じ場合が多いため、肉質や食感がブロイラーと大した差がないと感じる方もいるようです。地鶏よりも値段がリーズナブルで、ブロイラーよりはランクの高い鶏肉が銘柄鶏だと認識しておけば特に問題ありません。

上記の内容からも、日本国内だけでも大まかに3種類の鶏肉があることを確認しました。飼育方法や期間、品種によって味が違い、食べ比べてみるとその違いがよりはっきりと分かります。

福島県の地鶏の種類とは

全国各地には種類さまざまな鶏が多数飼育されていますが、その中で最もランクが高いのが地鶏と呼ばれる鶏肉です。銘柄鶏と比較しても明らかに味や食感が違い、また地鶏の種類によってもその味わいや食感、脂の質感などが微妙に違ってきます。

福島県内にもこだわりを持って飼育された地鶏がある訳ですが、地元民の方であってもその全てを知っているかと問われればなかなか知らない部分もあるものです。この章ではそんな福島県内で飼育される地鶏の種類について、以下で順に確認していきます。

会津地鶏

福島県内の地鶏として比較的古いのが会津地鶏です。会津地鶏自体の始まりこそはっきりとは分かっていませんが、羽毛の模様が美しいことから観賞用として飼われることもしばしばありました。そして会津地鶏の特徴的な黒く長い尾羽は1570年代に伝承されたと言われる、「会津彼岸獅子」の獅子頭の材料としても使用されてきました。このことから会津地鶏は最低でも500年以上前には会津地方で飼育されていたことがうかがえます。

また会津地方ではそもそも鶏の飼育が盛んではなかったために、他の地鶏との交配がなく会津地鶏の純粋種が昔から維持されたことが推測されます。ただし会津地鶏の純粋種そのものは体が小さく肉量が少量しか取れず、飼育する人も少なかったため一時期は絶滅の恐れさえありました。それが1987年に福島県の養鶏試験場が会津地方の農家から会津地鶏を譲り受け、鹿児島大学に血液検査を依頼したところ、固有種であることが判明します。そのため会津地鶏の原種としてその後も維持および繁殖されることになりました。それが「純系会津地鶏」として区別され、現在も県内で大切に保護されています。

現在も会津地鶏を飼育する農家はありますが、原種から品種改良が進み、体がより大きくなり肉質も向上しています。会津地鶏の鶏肉はコク深く旨味が強いため、素材の良さを活かす焼き鳥で食べると美味しいです。また脂がしっかりと乗っているため、唐揚げや鍋物などにも最適です。適度な歯ごたえがあり鶏肉特有の臭みも少ないため、和洋食を問わず幅広い料理に合わせることができます。

会津地鶏は約100〜140日かけて飼育されており、通常のブロイラーと比べると二倍近くの時間をかけて育てられます。そして平飼いで飼育されるためにストレスがかかりにくく、その肉質が良くなります。会津地鶏は見た目にも赤みが強く出ており、ブロイラーの肉と見比べるとその差は一目瞭然です。

また会津地鶏は鶏卵用品種の鶏の半分程度の量しか卵を産卵しませんが、数が少ない分その味は格別です。卵本来の黄身の美味しさやコクを楽しむことができる会津地鶏の卵は、肉と同様に高級食材として扱われています。

川俣シャモ

福島県にある川俣町は羽二重の産地として江戸時代から栄えましたが、当時の町長が地鶏の水炊きが好物であったことから町内で飼われていたシャモが注目を浴びました。美味しいシャモを飼育できれば地域産業が活性化されると考えられ、試験研究が続けられた末に川俣シャモが誕生したと言われています。

そんな川俣シャモは運動場のある飼育環境で平飼いにされており、のびのびと健康的に飼育されています。また川俣シャモ専用飼料を与えることで鶏肉の品質を餌から向上させます。

そうしてストレスなく健康的に育てられた川俣シャモは、適度な歯ごたえがあり噛めば噛むほど鶏肉本来の旨味が口の中に広がります。脂自体もしつこくはなく、コク深い肉汁が楽しめる地鶏です。

福島県内の地鶏は会津地鶏と川俣シャモの2種類だけですが、福島県内には美味しい銘柄鶏がもう1種類あります。地鶏に比べると確かにそのランクは落ちるかもしれませんが、ブロイラーよりも肉質が洗練されています。次章ではそんな福島県の銘柄鶏についても簡単に紹介しておきましょう。

福島県の銘柄鶏とは

福島県内で育てられているその銘柄鶏は「伊達鶏」と言います。この伊達鶏とは生産者である伊達物産の先代社長が、フランスのブレス地方を視察した際にブレス鶏と出会ったことに端を発します。地域の気候風土に合わせて養鶏をするその在り方に感銘を受ける形で、現在の伊達鶏の飼育につながったとされています。

1985年から飼育され続ける伊達鶏は当初、桃畑の中で放し飼いにされていたそうです。ただそれでは感染症のリスクに対応しきれないため、現在は開放的な鶏舎内にて自由に動き回れる状態で飼育されています。

飼育期間は約70〜82日とブロイラーよりも多少長めに設定されており、消費者層のニーズに応える形で品種改良されてきた経緯があります。例えばブロイラーでは柔らかすぎるし地鶏では固すぎるという肉質のニーズがあったことで、伊達鶏は柔らかくも歯ごたえのある食感の肉質へと品種改良されています。また鶏肉特有の臭みは少なく、ジューシーな肉汁たっぷりの旨味が強い味わいでもあります。

地鶏になってしまうと少々値段が張ってきますが、伊達鶏は地鶏よりもリーズナブルに美味しい鶏肉の味わいを楽しむことができます。循環型社会の実現を農業から図るべく廃棄物さえ有効活用しながら育てられる伊達鶏は、地域社会に広く貢献しながら飼育されています。

まとめ

今回は福島県内の地鶏と銘柄鶏について紹介しましたが、全国にはまだまだたくさんの種類の地鶏があります。また地鶏を食べる場合には素材の旨味を引き出す焼き鳥や鍋物、あるいは刺身といった料理で食べると、美味しさがいっそう強く感じられます。

また地鶏は品種によっても食感や脂の量、肉質が違ってくるため、地鶏の品種にこだわり食べ比べてみるとそれぞれ違った美味しさに気づけるはずです。普段から食べるには少しお高い地鶏ですが、特別な時の贅沢品として楽しむにはもってこいの格別な美味しさが約束されています。

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