福島に根付くソウルフード「凍み餅」
目次
福島県には昔から生活を支える独特の食文化が栄えています。
その中で昔から県民の心を掴んで離さない「凍みもち(しみもち)」があります。
寒冷で強い乾燥した風が吹く福島県の保存食として現在も変わらず愛されています。
気候と歴史が生んだ現代に受け継がれる食材とも言いかえられるのではないでしょうか。
現在は若い人への認知度・注目度も上がっているので福島の代表的な味へと変わりつつあります。
今回の記事ではそんな福島のソウルフードであるこの凍みもちについてご紹介していきます。
凍みもち(しみもち)とは?
凍みもちとは、よもぎやヤマゴボウの葉などの山野草の入った草もちを水で濡らしながら一つずつ形作り、1月から2月の寒い時期に軒先に吊るして乾燥させたもの。
見た目によらず、出来映えには気象条件が大きく影響します。
また、冬の寒さの中で乾燥させて作られるので「虫がつかない」という昔ながらの知恵も使われています。
「これ本当に食べ物なの?」と不思議に思う色合い、硬さが特徴的です。
氷餅や凍氷(しみごおり)とも呼ばれる福島の伝統的な保存食品で、おやつとしても食べられています。
乾燥状態のまま細かく砕いて和菓子の原料とする場合もあり、汎用性の高い食材として親しまれてきました。
食べ方も独特です。
ヨモギ餅のように焼く。電子レンジでチンする。
実はこうした普通のお餅を食べる感覚ではこの凍みもちを食すことはできません。
餅の大きさや気温などにもよりますが、たいていは数時間から一晩、まず水に浸さないといけません。
※市販されているものの多くが「食べ方」を記載したものが同封されてます。
冷水に浸してしっかりと戻した後にトースターやフライパンで焼くとこんがり美味しくできあがります。
味付けは砂糖醤油やきな粉が定番。
海苔を巻いて食べても間違いなしです。
この凍みもち、元々はお正月が終わった時に余ったお餅問題の解決先の一つとして考案されました。
冬の間にたくさん作った凍み餅を、農作業で忙しい春の休憩時間にみんなで食べるのが習慣。
江戸時代、天明・天保の大飢饉の頃から作られていたようです。
「凍み餅」自体は福島だけに伝わる特別なものではなく、冬の寒さが厳しい東北や信州を中心に
広く作られてきました。
乾燥させる際の気温、雪の量や湿度、風の強さなど、その場所によって気候風土が異なります。
そのため、地域によって見た目も作り方もかなり違うので、同じ福島県内でも会津地方と中通り地方を比べても差があります。
だからこそ本当の意味で違いを楽しめる「郷土食」として人気なんです。
また、食物繊維が豊富で腹持ちが良さそうなのでダイエット食としても注目を集めています。
参考記事:http://soma-yaki.com/news/omiyage18.html
参考記事:http://ch.pref.fukushima.lg.jp/shitte/movie/12/
食べ方の例
油をひいたフライパンで焼いて砂糖醤油、という食べ方が定番ですが他にも無数に存在します。
・じゅうねん(エゴマ)のタレをかけて栄養満点の凍み餅に。
・バターと焦がし醤油で風味良く味わう。
・焼いた後に「みりん6酒6醤油1」のタレと小口切りのネギでステーキ風に。
・小さく切った凍み餅をホットケーキミックスに絡めて油で揚げた「ドーナツ風凍み餅ボール」
など各地によって異なり、また時代によってもアレンジが変わってくるのが面白い所です。
また、Twitterには凍み餅を用いた独自のレシピをアップしてるユーザーも多く、参考になるのでおすすめです。
参考記事:https://cookpad.com/search/%E5%87%8D%E3%81%BF%E9%A4%85
参考記事:https://tripeditor.com/1841
Twitter:https://twitter.com/hashtag/%E5%87%8D%E3%81%BF%E9%A4%85
凍み天は福島の新たなソウルフード
福島県南相馬市原町区にある株式会社木乃幡が販売する揚げ菓子「凍み天」
今回ご紹介している凍み餅をドーナツ生地でくるんだものを油で揚げて作られています。
南相馬市が新たな観光資源などを発見するために開催したオリジナル商品コンテスト「O-1(オーワン)グランプリ」にて小売部門のグランプリを獲得した実績もあります。
これをきっかけに一気に広まり、新たな福島のソウルフードとして人気になりました。
ドーナツ生地なので子供にも喜ばれ、大きさもベスト。
形は何となくサーターアンダギーに似たような感じなので可愛らしい形状をしています。
この凍み天は芸能人の間やインスタグラムを中心としたSNSなどでも話題になっており、福島の新たなお土産として、大量に購入して帰る人もいるほどに。
生地のカリッと感、中のモチっと感は病みつきになること間違いなしです。
こうした実績は凍み餅を愛する福島県だからこそ生み出された証拠、といえるのではないでしょうか。
参考記事:https://travel-star.jp/posts/5328
参考記事:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%87%8D%E5%A4%A9
その他の”凍り”食材
福島県の冬は寒さが厳しく、乾燥した強い風も吹くので乾燥させる”凍り”食材が古くから盛んに作られてきました。
代表的なものに「凍み大根」「凍み豆腐」があります。
どちらも福島に根付いた食材で人々に愛されています。
凍み大根
大根をそのまま外で乾燥させたもの。
水分が無くなり凝縮され、大根の辛味も甘みに変わる保存食です。
「切り干し大根」は大根を細かく切って乾燥させたもの。
「凍み大根」は1本そのまま乾燥させたものです。
福島の中心街から離れた地域の家々では、冬の時期に大根をまるごと一本が縦にずらっと並び、横には何列にも連なって干されている光景を目にすることができます。
一度乾燥させる事により大根が空洞化。
そのため煮物に使用すると味付けも早くなり、格別においしくなります。
凍み豆腐
豆腐を屋外で凍らせ、乾かした豆腐を「凍り豆腐」と言いますが、福島県(東北)では凍み豆腐(しみどうふ)と呼ぶのが一般的です。
また全国的には「高野豆腐」という名前の方が知られています。
違いはあるのか、という疑問も浮かぶかもしれません。
実は高野豆腐と凍み豆腐は全く同じもの。
和歌山県にそびえ立つ高野山を中心とした関西圏の呼び方が高野豆腐です。
独特の舌触りと、凍み大根同様に空洞化になるので出汁を吸収しやすく、味噌汁や煮物に最適な保存食です。
凍み餅がモチーフのゆるキャラ「しみちゃん」
福島県の凍み餅愛は食材だけにとどまりません。
いわき市と郡山市の中心に位置する葛尾村では「しみちゃん」という凍み餅を”餅ーフ”にした公式イメージキャラクターも誕生しています。
親しみやすさを込めて本物の凍み餅とは違いピンク色にアレンジされているのもポイントです。
そんなしみちゃんは2017年の全国ゆるキャラグランプリに出場。
残念ながら471位という結果に終わりましたが、しみちゃんを応援する福島県民の絆はより一層強まったと同時に、凍み餅への愛を再確認した瞬間でした。
【しみちゃん基本情報】
性別:女の子
性格:しっかりもの。でも、時々天然で食いしん坊
体型:少しぽっちゃり気味
家族:兄
口癖:~しみ(語尾)
好物:凍み餅、ごんぼっぱ、いちご
長所:何事も諦めず粘り強い
趣味:凍み餅作り。食べ歩き
特技:踊り、つつじを育てること、動物が好きで話しができる
略歴:もち米→ばあちゃんの手で餅に→ばあちゃんの手で凍み餅に→たくさんの愛情でしみちゃんに
その他:凍み餅から生まれた精霊。赤松の木の上に兄と一緒に住んでいる
キャッチフレーズ:「小さな村から、もちもちと」
参考記事:https://www.katsurao.org/soshiki/21/imagecharacter.html
参考記事:http://www.yurugp.jp/ranking/?rank=401_600&year=2017
健康を意識した現代にマッチした凍み餅
昔ながらの凍み餅もいいですが、健康志向を意識して玄米を主原料にして作られているものも販売されています。
玄米を主原料にする事により、お米本来の味が楽しめるとともに、揚げたときの油切れが良いのでべたつかなくなるのが魅力です。
しかし、上記でご紹介したように凍み餅は食べるまでに水で5,6時間かけて戻すという工程が手間になります。
この手間を省き、開封すればすぐに食べられるように凍み餅を揚げたおかきをパッケージングして6次化商品として生産・販売するというチャレンジをしている農家の方もいます。
古くから親しまれている食材を、さらに次の世代に繋ぐきっかけにする。
福島のソウルフードを独自製法で人気の6次化商品にする挑戦をし、未来に希望を見出そうとする活動も広がっています。
参考記事:https://fukushima-pride.com/story/12/
見た目以上に食のバリエーション豊富な凍み餅
凍み餅は色黒なルックスからは想像もつかない人気と食のバリエーションを生み出す食材です。
また、福島の良質なお米が生み出す商品でもあるので、どんな組み合わせでも美味しく召し上がることができます。
凍み天の知名度アップをきっかけに、今後もさらに凍み餅への認知が全国区になっていくことを祈るばかりです。
福島の人々が愛してやまない凍み餅をぜひ試してみてはいかがでしょうか?
よもぎやヤマゴボウの葉の香りがどこか懐かしい気持ちにさせてくれることでしょう。